蜉蝣花

詩 日記 など日々。

こんにちは

飛んでいる

一心に
飛んでいる
陽炎に向かい
飛んでいる
眩い光に包まれ
飛んでいる
一に向かい
飛んでいる
消えたひかりの先追い求め


一はベンチに横になり、ぼんやり月を見ている
汗ばむ汗が首筋から流れ
それは真夏を表し夜なのに遠くで蝉が泣いていた
夜でも蝉泣くんだ、そう思つた

やけに喉が渇きふらつく頭を上げ髪をかき乱した
辺りを見回すと近くに水道の蛇口が見えるベンチから体を起こしフラフラと歩きだす
足が縺れ転んでしまった、体には水道から流れ出た土が泥となり付いたが気に留める事無く歩きだした、目の前を女が通り過ぎて怪訝な顔をして一を見ている

声をかけようもなら警察でも呼ぶ程に汚い者に見えるようだ、
公園の水道の蛇口を捻り頭から水を株り水を飲んだ、生暖かいが十分なほど渇きを癒してくれた、ふと手を見ると何故か契れた紙切れがあった

何処で手にしたか解らず検討も付かない無意識の内にズボンの中に押し込んだ
そこに書いてある文字すら気が付かず、そのまま又ベンチに戻った
どうってことないさ、そんな言葉を呟き又月を観ている、朝を迎える頃紙切れが
ポケットから飛ぶのも気が付かず

眠気で薄れる意識の中近くで  蝉が泣いた。
夢の中で会えた 君は笑っていた。 空に浮かんだ雲を指さして 「あれが僕だよ」と言った。夢から醒めた夢君はいなくなった。
空に浮かんでいた雲は消え青い空が広がった。

今確かに。
悲しいのは忘れられない思い出。
悲しいのはもう会えない約束。
一は笑った
とても悲しく笑った。

空に浮かんだ雲がちぎれた日
涙が零れ
蝉が泣き止み
陽炎花の中を飛んでいた姿は
地面に落ちた。
さようなら、と書いた紙が空に舞った。



    陽炎花。